■今度は全部救います基本的にはラブコメしつつセカイ系な内容
といういつもの新海誠作品。
「好きな人も世界もどちらも救う」展開は前作(天気の子)
との対比を感じましたが、本作のテーマを考えると
全部救うエンドになったのは正解だと思います。
他に今までの作品との違いとしては
・露骨なサービスシーンが減った
・ダイジェストシーンがなくなった
・SFではなくファンタジー寄りな作風って所で、今までやってきたことはあえて避けてたように感じました。
テーマがテーマだけに新海誠作品特有の
性癖発表会みたいな部分は薄まってて
より見やすい作風になったんじゃないかと思います。
(そこら辺を期待して観に行くと少しがっかりしますが)
あと、本作は九州から東北まで旅を描くものでしたので
ロードムービー的な要素が強いと感じました。
旅先で出会った人々との交流をしながら
「戸締り」で人を救って行き、
最終的に好きな人も世界も自分も救って行く物語。
■歪みながらも進み続けた主人公=岩戸鈴芽
新海誠作品の主人公はフィジカルと行動力が
ぶっ飛んでることが多いけど
この子も例に漏れず凄かったですね。
ただ鈴芽の一番ヤバいと思ったところは
「死ぬかもしれない」と聞いて
「死んでもかなわない」とノータイムで返したところですね。
自分がとれる選択肢の中で、
それが他の全員を幸せにする為の最善であるのなら、
何の躊躇いもなく「自分を犠牲」にすることを選ぶあたりも、
一種のサバイバーズ・ギルトになっていたようにも感じました。
ただ、(自分が騒動の原因になったとはいえ)
間違いなく一番多くの人々を救った主人公なのは確かです。
世界も救う。好きな人も助ける。
両方やらなくちゃいけないってのが主人公の辛い所です。
■世界一カッコいい椅子型ヒロイン=宗像草太
本作のヒロインであるイケメン大学生。
作中の大半の時間を椅子の姿で過ごすことになったんですが
それでもちゃんとラブコメっぽいことをしてたのが良かったですね。
旅の中で二人が協力し合いながらも距離を詰めていく過程が
きっちり描かれていました。
特殊な家系に生まれながらも学業をしつつも
人々を守るために活動しているあたりや、
決して人から称賛されることなく活動してる点など見ても
本質的に「ヒーロー」みたいな存在だったと思います。
だからこそ人柱になることもある程度は受け入れていたんだろうけど、
それはそれとして
「鈴芽と出会ったからまだ生きたい。死にたくない」って思えたのが彼にとっての大きな変化だったんでしょうね。
■愛されたかった神=ダイジン
理由を知ってしまうと憎めない
負けヒロインムーブをしまくる神様。
そもそも彼の行動は「鈴芽に愛されたい」
「自分が抜けたことで降りかかる災いを止めたい」
で一貫していたのでそこまで悪とは言い難い存在でした。
愛されたかったけど、愛されてないと知って
それでもその子のために自分のできることを
精一杯やったのだと思うと…憎めませんね。
■最高の友人にして苦労人=芹沢朋也
一番印象に残ったサブキャラ。一見チャラ男だけど、その中身は完全に
善性の塊と言うギャップが凄まじい本作屈指の苦労人。
やたら重苦しくなっていった終盤の癒し的な存在で
一貫して親友のために行動してた点も
本当に素晴らしかったですね。
終盤に出て来るお助けキャラとして
過去作主人公の声のキャラが出て来るとか
めっちゃ王道すぎて良い。
■明日への希望終盤である事実と鈴芽の衝撃的な過去が明らかになるのですが、
結局本作が描きたかったことってこれなんじゃないかなと思いました。
黒く塗りつぶされたページと「例の災害の日」を示す数字が出てきた時
鳥肌が立ちましたし、鈴芽があの景色を好きだと思えない理由は
納得しかなかったです。
だからこそ今の自分から過去の自分に向けてのあのセリフは
自分の人生を肯定していて本作で一番好きなシーンでした。
震災によって傷を負った少女が過去に区切りをつけて
「行ってきます」と明日に向かって歩みだしたラストは
タイトル通り「すずめの戸締り」してて素晴らしいなと思いました。
まとめ:
新海作品で一番"優しい"物語。がんばったひとに「がんばったね」
「いってらっしゃい」っと背中を押してあげる映画。
主人公が原因でありそれを元に戻すまでの内容でしたので
ある意味で
「あるべき姿に戻るまでの物語」だったと思いますが、
そこまでの過程で得た出会いや愛には
きっと意味があるんだと感じさせる余韻が素晴らしい作品でした。
誰かを救ってきた主人公が最後に自分を救う結末
ってやっぱり良いものですよね…
映像作品として見ても次々と場面が切り替わることで
飽きさせない作りや作画クオリティの高さ、
背景の美しさなど非情に素晴らしい映画でした。
ただ一方で「例の災害」についてがっつり触れる内容で
警報の音とかかなりリアルなので、
結構人に勧めるのはちょっと躊躇ってしまう映画なのも事実ですね。
決して風化してはいけないし、12年が経過した
今だからこそ上映できた作品でもあったと思います。
以上、すずめの戸締りの感想でした。

「過去に干渉して隕石を回避するんだよ!」が君の名は
「東京沈めて好きな子を救うんだよ!」が天気の子
「世界も好きな人も自分も救うんだよ!」がすずめの戸締り
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しぬのが怖くないという感情は「幼少期に全部無くしてしにかけた」という経験から来るものかもしれませんね。悪い意味で最悪に慣れたというか。
・・・・本当に衛宮士郎だなこの子・・・・
しかしイケメン大学生を3本脚の椅子にして生活させるという新手のSEIHEKIが出てきましたね・・・(特定の物に封印してどうこうってのは割とありそうですが)
ダイジン、観てるときは「こんのネコ・・・!」とか思いましたが負けヒロインムーブという表現で全て納得しちゃいました。
逆にサダイジンは「人のために身体張ってくれる獣」というのが熱かったです。
ワンピ初期のペットショップ焼かれた犬とか好きなタイプなので(人のために戦ってくれえる生き物好き侍)
逃げる猫をSNSで探すという時代の流れを汲み取る描写は良かったです。
(ダイジン、カメラに映るんだ・・・・霊体の類かと思ってたけど)
奇怪!3本足で走る椅子!これはスポーツ新聞に出ちゃうやつだ・・・・
サントラの1曲「廃墟の温泉街」(最初に閉じたドアのBGM、めっちゃ良いですよ・・・バトル漫画読む時のお供に最適です。
コメントどーも
> すずめ、成り行きとはいえ唐突に知り合った男と県外果ては東北まで報連相ナシで行っちゃうのは新海誠が描く「無軌道な若者」感がありました。(いつものこと)
子供の頃に会ってた運命の人ですから…
> しぬのが怖くないという感情は「幼少期に全部無くしてしにかけた」という経験から来るものかもしれませんね。悪い意味で最悪に慣れたというか。
> ・・・・本当に衛宮士郎だなこの子・・・・
深海版衛宮士郎感ある主人公でした。
> しかしイケメン大学生を3本脚の椅子にして生活させるという新手のSEIHEKIが出てきましたね・・・(特定の物に封印してどうこうってのは割とありそうですが)
自分の部屋で女子高生に踏んでもらったとか…確かに直接的に描写しないだけで隠れた発表会だったのかもしれません
> ダイジン、観てるときは「こんのネコ・・・!」とか思いましたが負けヒロインムーブという表現で全て納得しちゃいました。
おそらく人柱になったのは幼い子だと思うので、
だからこそ自由になって愛されたかったんだと思いますね。
> 逆にサダイジンは「人のために身体張ってくれる獣」というのが熱かったです。
> ワンピ初期のペットショップ焼かれた犬とか好きなタイプなので(人のために戦ってくれえる生き物好き侍)
サダイジンが抜けた理由は結局分からなかったんですけど、
やっぱり片方が抜けて一つだけだと耐えられなかったってことなのかな?
> 逃げる猫をSNSで探すという時代の流れを汲み取る描写は良かったです。
> (ダイジン、カメラに映るんだ・・・・霊体の類かと思ってたけど)
> 奇怪!3本足で走る椅子!これはスポーツ新聞に出ちゃうやつだ・・・・
すずめがSNS見てなかったら詰んでた可能性ありますので、
ダイジンの行動もかなりギリギリでしたね…(日本中大地震の連鎖が続いてたかと)
事前に注意喚起あって劇場にも張り紙あったとはいえ
ここまであの音と出来事が関わってくると思ってなくて
色んな意味で驚きビビりました・・・
でも実際あって一部体験したことだからこそ
かなり臨場感あって見入ってしまったと思う
芹沢さん
やりとりのせいで周りの人から誤解されたり
メインキャラからの扱い含めてどこか不憫だったけど
間違いなく清涼剤でした
道中の方々
鈴芽と草太の出会いだけでなく
道中であった人がみんないい人たちで
あの音
事前に注意喚起あって劇場にも張り紙あったとはいえ
ここまであの音と出来事が関わってくると思ってなくて
色んな意味で驚きビビりました・・・
でも実際あって一部体験したことだからこそ
かなり臨場感あって見入ってしまったと思う
芹沢さん
やりとりのせいで周りの人から誤解されたり
メインキャラからの扱い含めてどこか不憫だったけど
間違いなく清涼剤
道中の方々
鈴芽と草太の出会いだけでなく
道中であった人がみんないい人たちで
色々と運命的でしたね
> 事前に注意喚起あって劇場にも張り紙あったとはいえ
> ここまであの音と出来事が関わってくると思ってなくて
> 色んな意味で驚きビビりました・・・
ネタバレになってたと思うけど、注意喚起を入れなかったら確実に苦情来てただろうしね。
> でも実際あって一部体験したことだからこそ
> かなり臨場感あって見入ってしまったと思う
不謹慎と捕らえれるかもしれませんが、
自分はちゃんと形として残すことに意義があると思いますね。
(自分の住んでる地方はそれほどひどくはなかったですが
子供の頃一応関西で震災を経験してますから)
> 芹沢さん
> やりとりのせいで周りの人から誤解されたり
> メインキャラからの扱い含めてどこか不憫だったけど
> 間違いなく清涼剤でした
初見=なんだこのチャラ男は
終わった後=芹沢くんマジで苦労人
> 道中の方々
> 鈴芽と草太の出会いだけでなく
> 道中であった人がみんないい人たちで
前作はやたら一部の人間関係が冷たかっただけに
今回はちゃんと暖かい人間の世界を描いたように感じますね。